私は以前から日本のリカレント教育遅れを危惧していたので、プロジェクトの話を聞いたときはとてもわくわくしました。
学習意欲の向上・維持をするには「学びを評価する仕組み」が重要な役割を持つと考えていたため、学んだことをポータブルに可視化できるデジタル証明は、誰もが当たり前に学び続ける世界を創り出すための第一歩になり得ると確信しました。
同時に日本に前例がなく、今までの学びの在り方を根本から変える仕組みでもあったため、正直なところ責任の重さも強く感じましたね。
オープンバッジは日本にこそまだ上陸していませんでしたが、開発当時でもアメリカを中心に年間4,000万個が発行され、世界ではかなり注目度の高いサービスであったこと、またその価値に目をつけていたのは当社だけではなかったというのが一つの要因です。
また、より開発の緊急性を強く感じたのはコロナウィルス(Covid-19)のパンデミックによる影響でした。
多くの企業による人員削減のニュース、スキルベースで採用するJOB型雇用の促進、ビジネスモデルの変化など、様々な環境変化に対応するための「主体的な学び」が注目され、必要とされる時代が一気に押し寄せてきたことを感じました。
このプロジェクトは「IT×教育」分野のリーディングカンパニーである私たちだからこそ、いち早く日本で成功させなければと強く思いました。
日本にとってまったく新しい価値となるOpenBadgeは、当然ながら日本に前例がなく、参考にできるものは海外の文献のみ。IMSグローバルから公開されている仕様書を活用して自社仕様に企画設計する際は、すべて英文で解読に苦戦しましたし、曖昧な表現や例外の記載がないので開発と検証の繰り返しでした。
さらにデジタル認証には、仮想通貨などで使われているブロックチェーン技術が必要不可欠ですが、社内にはブロックチェーン技術での開発経験者は誰もいなかったので、英文仕様書読解と並行してプロジェクトメンバー全員でブロックチェーン技術の学習も行いました。開発リソース確保のため当社韓国支社チームとも連携し、チーム一丸となって取り組みました。
様々な障害からスタートしたプロジェクトでしたが、当社には「スコープとコストとスケジュールはトレードオフであるべきで、完璧を求めすぎない」という考えが根付いていたので、現場に即したテスト計画を綿密に立てることが出来、不具合や問題への予測が的中したため動揺も少なく計画通りに進めることができました。